教授あいさつ
整形外科は運動器の疾患を扱う診療科であり、脊椎と脊髄を扱う「脊椎外科」、上肢を扱う「手外科」、「肩関節外科」、下肢を扱う「股関節外科」、「膝関節外科」、「足の外科」、スポーツを扱う「スポーツ医学」、けがや障害を扱う「外傷外科」、リウマチや膠原病を扱う「リウマチ外科」、腫瘍を扱う「骨・軟部腫瘍外科」、小児を扱う「小児整形外科」など多くの専門分野があります。また、新生児から高齢者まで幅広い年齢層を対象としており、その内容は多様で治療の対象となる患者さんが極めて多いという特徴があります。健康上の問題がなく日常生活を送れる期間が健康寿命ですが、日本人が世界一の長寿の恩恵を甘受するためには、平均寿命だけでなく健康寿命を延ばすことが重要です。日本人の平均寿命と健康寿命の間には、約10年間の差がありますが、健康寿命が終わる原因の2~3割を骨折・転倒、関節症など整形外科疾患が占めており、われわれ整形外科医の役割は、高齢化の進行とともにますます重要なものとなっています。長崎大学整形外科教室は1954年に開講しましたが、これまでに450名を超える優秀な整形外科医を養成し、国内外の最先端の研究施設や臨床施設との連携や留学も積極的に推進してきました。現在、長崎大学整形外科教室の同門の先生方は全国で活躍しています。各分野の診療技術の向上に伴い、長崎大学病院での整形外科・外傷関連の年間手術件数は1,500件を超えており、その数は全国の国立大学病院の中でもトップクラスで(2019年度は全国1位)、関連病院における総手術件数も年間1万例を越えています。研究に関しては、各分野の臨床研究、バイオフィルム研究、骨粗鬆症や変形性関節症の疫学研究、3次元有限要素法による生体力学的研究など様々な分野の研究を行っており、最近では、臨床用CTとしては最も高い解像度を有する第2世代HR-pQCT(high resolution peripheral quantitative CT, 高解像度末梢骨用定量的 CT)を用いて、日本人における骨粗鬆症、変形性関節症、関節リウマチ、内科疾患などに併存する骨病変の病態解明、疾患の予防、治療法の開発やその評価に関する研究も実施しています。長崎はこれまで整形外科学を含め日本の医学の入り口であり、長崎から新しい医療を全国に発信してきました。長崎大学整形外科教室はこれまでの良き伝統を守りつつ、教室員一同力を合わせ、これからも長崎から国内外に最先端の研究、教育、医療を発信していきたいと考えています。